オフィス移転の成功への道筋: スムーズな移転と効率化のポイント

オフィスの移転は大がかりなプロジェクトであり、多額の費用はもちろん、大小の膨大な業務が発生します。失敗したからといって簡単にはやり直せないからこそ、オフィス移転にあたっては、早いタイミングで移転の流れと業務の全体像を把握し、余裕を持った計画を立てることが欠かせません。

そこで、どのようにオフィス移転を計画すればいいのか、時系列でのオフィス移転の流れと、スムーズな移転を実現するためのポイントを解説します。

オフィス移転の計画とスケジュール

規模にもよりますが、オフィスの移転は半年~1年がかりの長期プロジェクトになることがほとんど。事前の準備を含め、平均して8カ月程度の期間を要します。

オフィス移転にあたっては、大小の膨大な業務が発生するため、移転をスムーズに進めるためには、「いつ、何をしなければならないのか」を早い段階で理解しておく必要があります。まずは、時系列でのオフィス移転の流れとおもなタスクを確認しておきましょう。

オフィス移転の準備: スタートから8カ月前まで

前述の通り、オフィス移転には平均して8カ月程度の期間が必要となるため、引っ越しの約1年前~8カ月前には移転準備に着手する必要があります。

その際、まずやるべきことは、オフィス移転の目的と新オフィスに求める要件を整理することです。このとき、「オフィス賃料の削減」「従業員の通勤利便性の向上」など、すでに具体的な目的がある場合でも、それだけで終わらせないようにしましょう。現状の課題を踏まえて、理想とする働き方やコミュニケーションのあり方まで含めて考えることで、「部門間のコミュニケーションが活発になるオフィスにしたい」など、第2、第3の移転の目的が見えてきたり、新オフィスに求める条件が明確になったりするかもしれません。

次に、移転に伴って発生する業務を洗い出し、それぞれの業務をいつ、誰(どの部署)が担当するのかを決めて、全体スケジュールと業務一覧を作成します。その際、どこからどこまでを外部業者に依頼するかもあわせて検討しましょう。

7~6カ月前

移転の7~6カ月前までには、新オフィスの物件探しを行います。物件を探す際は、立地や面積、費用などの条件に基づいて複数の候補をピックアップし、実際にその場所に足を運んでから決めるようにしましょう。新オフィスの物件が見つかり、入居審査に合格したら、賃貸契約を結びます。

並行して、現在のオフィスの管理会社に解約予告を行います。解約予告が遅れると、余分なコストが発生してしまうおそれがあるため、事前に現在のオフィスの契約内容を確認しておき、新オフィスが決まったらできるだけ早く解約予告をするようにしましょう。

5~4カ月前

移転日が確定次第、オフィス移転業者に引っ越しを依頼します。現在のオフィスを退去する際は、原状回復が必要となるため、原状回復工事の依頼も早めに行いましょう。物件によっては業者が指定されている場合がありますが、そうでなければ、自社で業者を選定することになります。

あわせて、新オフィスのデザイン、レイアウト作成も進めます。理想を実現するこだわりのオフィスを目指すなら、専門の業者への依頼をおすすめします。オフィスプランニングには建築基準法や消防法などの専門知識が必要になってきますので、そういった面でも信頼できるパートナーに相談できると安心です。

レイアウトが決まったら、必要に応じてオフィス家具や什器の発注を行います。また、この頃から、徐々にオフィス内の物品を整理したり、不要品を処分したりしておくと後がスムーズです。

3~2カ月前

移転の3カ月前までには、新オフィスの内装や電気・通信工事を依頼します。電話の移設においては、現在使用中の電話機器が移転先で利用できるかどうか確認しておきましょう。
工事のスケジュールについては、内装工事と電気、空調関連の工事日がバッティングしないよう調整が必要です。電気や通信の状態に不具合があると業務に支障が出るため、必ず動作検証を行ってトラブルがないようにしましょう。

また、名刺や自社封筒など、会社の住所が記載された媒体や印刷物、備品をリストアップして、新住所が記載されたバージョンを発注しておきます。

さらに、社内向けにも説明会を開催したり、移転マニュアルを配布したりするなどして、移転の流れや新オフィスの詳細、利用規則などの情報を周知します。

これらと並行して、引っ越しの約2カ月前を目途に、すぐに使わない物品の梱包も進めていきましょう。

最終月

移転の1カ月前までを目途に、新オフィスの内装工事や什器の搬入を開始します。このとき、コンセントが使いやすい位置にあるかなど、実際に業務を行うときの導線を意識しながら、改めて新オフィスの使い勝手を確認しましょう。

1カ月前までには、取引先や関係者への連絡、会社ホームページ等での事前告知も済ませておきます。クライアントだけでなく、取引のある金融機関や弁護士事務所などの業務委託機関、備品のリース会社、加入団体など、会社の住所を登録している先のリストを作成し、漏れがないようにするといいでしょう。

また、引っ越し当日の詳細なタイムスケジュールや役割分担表を作成し、社内で共有しておくと、当日の動きがスムーズになります。

オフィス移転の直前・直後の作業

旧オフィスからの搬出にあたっては、運搬中の事故などに備えて、必ず、事前にデータのバックアップを取っておくようにします。自分たちでやろうとすると大変な作業になるので、移転業者がデータのバックアップに対応していない場合、専門業者への依頼を検討してもいいでしょう。

引っ越し当日は、旧オフィスでの積み残しがないか、旧オフィスで不具合がないかを確認するため、新旧両オフィスで立ち会いが必要です。あらかじめ、引き渡しの担当者を決めておきましょう。

旧オフィスからの搬出が完了したら、原状回復工事が始まります。旧オフィスの解約日までに原状回復が完了するよう、定期的に進捗状況を確認するようにしてください。

移転後は、税務署や法務局、社会保険事務所などさまざまな役所への届出が必要となります。手続きの内容によっては期日があるため、あらかじめ手続きの種類と届出先、期日を確認しておきましょう。作業漏れが発生しないように事前にチェックリストなどを用意しておくのもよいでしょう。

移転先の物件選定とオフィスデザイン

オフィス移転の肝ともいえるのが、新オフィスの物件選定とデザインです。次のようなことを踏まえて、自社が理想とする働き方ができる新オフィスづくりを進めていきましょう。

立地と物件の条件

新オフィスの物件を選ぶ際は、立地、面積、設備、入居コスト、周辺環境、ビルの使用可能時間などさまざまな要素を考慮して、最も自社の目的に合った物件を選ぶ必要があります。

立地を考える際は、従業員の通勤利便性や取引先・クライアントへの訪問のしやすさはもちろんのこと、オフィスの立地が企業ブランディングにつながることも意識しなければなりません。すべての条件を完璧に満たす物件はなかなか見つからない可能性もあるため、優先順位を整理しておくといいでしょう。

オフィスデザインの検討

晴れて物件が決まったら、新オフィスのデザインとレイアウトを検討します。オフィスのデザインは企業イメージを左右するだけでなく、従業員のモチベーションにも影響する重要な要素です。

レイアウトプランを作成する際は、部署ごとに必要なスペースを洗い出し、配置を考えます。その際は、「機密情報を扱う部署は隅に配置する」など、各部門の業務の特性を踏まえてレイアウトを決めるようにしましょう。

メンバーの人数が同じであっても、大きなモニターを使用している部署や大きな資料を広げる機会が多い部署は、より広いスペースを確保しておく必要があるかもしれません。実際に各部署で働いている従業員に、現在のオフィスで不便に感じていることや、新オフィスに希望することをヒアリングすると、より現場目線でのオフィスプランニングができるでしょう。

移転に伴う業者選定とコスト管理

オフィス移転は大がかりなプロジェクトとなるため、外部業者のサポートが欠かせません。業者を選ぶ際は、費用の安さだけでなく、サービスの範囲やアフターフォローの充実度など、総合的な費用対効果を意識するといいでしょう。

オフィス移転業者の選定

オフィス移転の際は、オフィス移転業者を利用するのが一般的です。オフィス移転は一般住宅の引っ越しよりも複雑で、旧オフィスの原状回復や新オフィスの配線工事など、専門知識が求められる業務も多いため、オフィス移転を専門とする、実績のある業者を選ぶのがおすすめです。移転後に不具合やトラブルが生じた場合に備えて、アフターフォローが充実している業者を選ぶとより安心です。

オフィスデザイン、オフィスレイアウトにこだわるなら、移転業者とは別に当社(ACTUS for PROFESSIONAL)のような専門業者への依頼も検討しましょう。

一般的に、オフィス移転には8カ月程度の準備期間を要するため、時間に余裕を持って物事を進めるには、引っ越しの約1年前から業者選びを始める必要があります。

その際、事前にオフィス移転の目的や引っ越しの時期、予算、依頼範囲などの要件とともに、オフィス移転にあたって自社が抱えている課題などを明確にしておくことをおすすめします。そうすることで、求めるものや優先順位が明確になり、業者選びがスムーズになります。

移転コストの算出と削減方法

オフィス移転に際して、しばしばボトルネックとなるのが費用です。オフィスの移転には、前家賃や保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、火災保険料、内装工事費、電気・通信工事費といった新オフィスにかかる費用のほか、引っ越し費用や旧オフィスの原状回復工事費用、不用品処分費用、行政手続きや印刷物の作り直しにかかる費用など、大小さまざまな費用が発生します。さらに、移転に伴ってオフィス家具や什器を新調する場合、家具や什器の購入費用(またはリース・レンタル費用)や不用品の処分費用もかかってきます。

膨大な移転コストを少しでも削減するには、工事業者や移転業者を選定するときは、相見積もりを取って、複数の業者を比較検討することがポイントになります。

家具や什器を処分する場合は、リサイクルショップなどに買い取ってもらうことにより、費用が抑えられる可能性があります。また、移転に伴う行政手続きを自社で行うことにより、代行費用が削減できます。

まとめ - オフィス移転を成功に導くために

オフィス移転にあたっては、膨大な業務が発生するため、オフィス移転に成功するには、早め早めの行動と綿密なスケジュール管理が大切です。また、オフィス移転は会社全体を巻き込む一大プロジェクトだからこそ、社員への移転目的や新オフィスのコンセプトの周知徹底、部門の枠を超えた協力体制の構築など、社内のコミュニケーションも大事になってきます。

また、業者の選定もオフィス移転の成否を左右する要素です。オフィス移転の目的を踏まえて、「理想のオフィスづくりに向けて並走してくれるパートナーを見つける」という意識で、業者選びをするといいのではないでしょうか。