Tokyo National Museum 3/4

東京国立博物館 黒田記念館 3/4

アクタスが輸入家具にこだわった理由

1872年に創設された日本最古の博物館、東京国立博物館。通称「トーハク」として親しまれる同館では、複数の展示室でアクタスが提案したインテリアが採用されています。あくまでも展示作品が主役の博物館で、なぜインテリアにこだわる必要があるのでしょうか。2014年12月に完了した黒田記念館のリニューアルプロジェクトの舞台裏をメインに、東京国立博物館 学芸企画部企画課 デザイン室長の木下様とアクタス営業担当の宮本にお話を伺いました。

― 特別室のほか、黒田記念館のリニューアルオープンにあたってアクタスが手がけたインテリアはどれですか?

宮本
黒田記念室のスツールと資料室のソファ、映像室のチェア。それから、エントランスにあるパンフレットラックなどですね。

木下
黒田記念室のスツールもアクタスに提案いただいたキューブ型のものを使っていますが、当初は国の登録有形文化財にもなっている昭和初期の洋館になじむようなアンティーク風の木製チェアをイメージしていたんです。黒田記念室には黒田の画室を再現したステージもあるので、インテリアを優先した空間にして、黒田がフランスで絵を学んでいた頃の雰囲気で統一できないかと。ただ、そこにこだわると歴史的な検証が必要になってキリがないし、なにより現代の博物館としてお客さまに親しみのある空間にしたほうがいい。そこで、いまのかたちに落ち着きました。

宮本
やはりご高齢の方も多くいらっしゃるので、人間工学的に優れているもの、そして先ほど申し上げた通りデザイン性と機能性に優れたものをご提案しました。あとは、このすばらしい洋風建築に見合うものということで、できるかぎりヨーロッパの家具を選びましたね。

木下
この映像室のチェアもいいんだよね。どちらかといえば実用性重視のスタッキングチェアが良かったからデザイン面はあまり期待していなかったんだけど、実際に納入された椅子を見て「おおっ!」と驚きましたよ。すごくシンプルなのにフォルムが官能的で、黒も艶っぽくて……さすがイタリアの家具は違うなぁと(笑)。

宮本
アルパー社の「CATIFA」ですね。じつはいまだから笑って言えるのですが、この椅子をイタリアから輸入する際、受注をいただくタイミングが悪かったこともあって納期がギリギリになってしまったんですね。しかも、そんなときにかぎって悪天候が続き、最悪、間に合わないことも予想された。その場合、同じようなデザインの代替品を使うことになると腹をくくっていました。結果的には納期に間に合い、木下さんにも喜んでいただけたわけですが、あのときは肝を冷やしましたね……。

木下
そうだったんですか。

― お互いに知らなかった苦労が数多くあったということですね(笑)。でも、宮本さんとしては多少のリスクを冒しても輸入家具にこだわりたかったと。

宮本
そうですね。ただ、今回弊社からひとつだけ輸入モノではなく、「AOYAMA」という国産の椅子を提案させていただいたんです。木製のすばらしい椅子ですし、黒田記念室に置くインテリアとして木下さんが当初イメージされていたものに近いのではないかと思って。けっこう強引にプッシュしたのですが、それだけは却下されてしまいました(笑)。

木下
いや、すごくよかったんですよ。黒田記念館でも1階のショップに使っている椅子は某日本メーカーがつくっているトーネットチェアを再現したものですから、国産がダメだというわけではないんです。むしろ個人的には日本の家具メーカーはいろんな工夫をしてがんばっているなと好意的に見ているのですが……今回はギリギリのところで採用には至りませんでしたね。

木下 史青
東京国立博物館

1965年、東京生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、同大学美術学部デザイン科助手、(株)ライティング プランナーズ アソシエーツを経て、1998年より専属の展示デザイナーとして東京国立博物館に勤務。照明、配置、保存など展示に関するプロデュースを主な業務とし、「国宝 平等院展」「国宝 阿修羅展」をはじめとする特別展・総合文化展の展示デザインを手がける。2004年には東京国立博物館の本館リニューアルにおいて平常展示のリニューアルデザインを担当。平成18年度日本デザイン学会年間作品賞を受賞。著書に『博物館へ行こう』(岩波書店)、共著に『昭和初期の博物館建築』(東海大学出版会)がある。

宮本 紳
ACTUS営業

1959年、長崎県生まれ。慶応義塾大学ラグビー部出身。2007年1月、アクタスに入社。教育施設をはじめ、オフィス、リゾートホテル、飲食、教会などコントラクト案件を数多く手掛ける。インテリア業界歴20年強、日々新たな発見がある。

東京国立博物館 黒田記念館

住所:〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
開館時間:9:30~17:00 (入館は閉館の30分前まで)*時期により変動あり
入館料:一般620円、大学生410円 *黒田記念館は入館無料
お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
WEBサイト:http://www.tnm.jp/