ETOWA KASAMA 1/2

エトワ 笠間 前編

自然がそばにある場所で“憧れの暮らし”を体験する

コスモスイニシアが立ち上げたアウトドアリゾートの新ブランド『ETOWA(エトワ)』。その第一弾である『ETOWA笠間』は、茨城県笠間市の愛宕山の上にある、10棟のキャビンとテント6棟、アウトドアバーやファイヤープレイスから成るグランピング施設です。アクタスはそのデザイン監修を務めました。コスモスイニシアの田片様と、アクタス営業の上久保、デザイナーの相田に、今回のプロジェクトに込めた想いを伺いました。

田片 株式会社コスモスイニシア R&D部門 新規事業推進一課 チーフ
上久保 株式会社アクタス 法人営業部 アコモデーションチーム 営業
相田 株式会社アクタス 法人事業本部 法人営業部 デザイナー

ーコスモスイニシア様はこれまで、主に分譲マンション事業を展開してきました。今回、アウトドアリゾート事業を始めた理由は何だったのですか?

田片
もともとは、これから先、みんなはどんな暮らしをするようになるんだろうという話から始まったんです。今はどの企業も、残業時間の削減や有給消化の促進、リモート化などを進めていて、働く場所も時間も変わっていくことが想像されます。そうした議論を社内で重ねていく中で出てきたのが、「余暇時間」の変化に対応する事業でした。自由にできる時間が増えたら、その時間をどう過ごすかを考えますよね。そんな時に、旅行よりももっと気軽な、ちょっとしたお出かけ先の感覚で「この週末あそこに行ってみない?」と仲間や家族を誘って行けるような場所があったら、そうした余暇時間の過ごし方ができるようになれば、日常がもっと充実するのではないかと考えました。

ー余暇時間の使い方として、「憧れの暮らしを体験する」という提案をしているのが、住まいをつくってきたコスモスイニシアらしいと感じました。

田片
暮らすような体験を提案するというのは、今回のエトワ笠間で気にかけたことでした。今、「きちんとした暮らし」に憧れを抱いている人は、多いと思うんです。「朝の陽の光を浴びて目覚める」とか、「ゆっくりお茶を楽しむ」とか、「住まいを整える」とか。でも、それを日常の暮らしの中で叶えるのは大変じゃないですか。忙しくてなかなか片付けられなかったり、食事にあまり気が遣えなかったり。一方、自然の中で過ごしたいと思った時も、キャンプは準備や片付けがあって、それが楽しい部分でもあるのですが、私の妻なんかは「大変だ」って言うわけです(笑)。だったら、その過ごし方の気持ちいいところだけをエトワ笠間でやりませんか、という。「憧れの暮らし」がそこに行けば体験できる、暮らしの延長線上にある場所にしたいという想いがありました。

ー今回のプロジェクトでは、笠間市の団体が管理運営していた宿泊施設をリノベーションして活用しています。

相田
既存のロッジは、窓がたくさんあって、まわりの自然をとすごく近くに感じられる空間でした。身近に自然がない生活を送る人が都会ではほとんどだと思うので、こうした森の中で一日を過ごす体験ができるというのは、とても贅沢で魅力的だと思いました。

田片
でも、内装は古びていたので、デザインを担当する相田さんにどんなリアクションをされるんだろうと、実はすごく不安でした(笑)。

上久保
予算との兼ね合いもあり、田片さんとは、できるだけ既存の空間を活かす形でインテリアを整え直してみようという方向で話を進めていきました。ただ、ロッジなので、丸太が剥き出しの内装なんですね。そういった空間のインテリアを手掛けることがあまりないので、正直を言うと当初は戸惑っていたんです。でも、相田と現地を見に行ったら、「すごい!」「かわいい!」の連呼で。これはいける、と確信しました(笑)。

ーアウトドアリゾート事業第一弾のパートナーにアクタスをお選びいただいたのは、どんな理由からだったのですか?

田片
今回の事業は笠間市と弊社との公民連携事業で、土地と建物を笠間市から賃貸しているんです。将来、不動産を返却する可能性があることと、資産の有効活用という点からも、既存建築を使うことを基本に計画がスタートしました。建築に極力手を入れず、デベロッパーである当社ならではのデザインを考えた時、必要なのはインテリアの力だと。ただセンスの良い家具をレイアウトするだけではなく、お客様の利用シーンまで想像した上で、施設の内外を含めた価値を上げてくれるパートナーと組むことが、プロジェクトを成功させる要因になると思いました。そう思った時、迷わずアクタスに相談していました。

上久保
これまでもホテルへの納品実績はありましたが、今回は住宅事業を展開しているコスモスイニシアがつくる「暮らしの延長線上にある宿泊空間」という、一般的なビジネスホテルではなかなか着想しないコンセプトでもあり、アクタスとしてもぜひ力になりたいと思いました。

田片
アクタスにはこれまでも、モデルルームのスタイリングや、ご購入者様の住居のインテリアコーディネートなどをお願いしてきた経緯があり、アクタスが提案するインテリアの魅力を社として認識していたということも、今回お願いをした大きな理由でした。

思い描いているシーンの実現と居心地の追求

ーデザイン監修やインテリアコーディネートはどのように進めていったのですか?

上久保
今回アクタスでは、宿泊スペースと共用部の内装・外装のデザイン、インテリアのコーディネートを行わせていただきました。あとはスタッフの方のユニフォームも、アクタスのオリジナルブランドを採用していただいています。打ち合わせを重ねる中で田片さんがずっと仰っていたのは、普段の生活では体験できないようなこと、非日常的な暮らしの体験をここでして欲しいということでした。

田片
私からのリクエストが、サイズや機能などではなく、ビジュアルイメージやニュアンスといった抽象的なことばかりだったので、上久保さんや相田さんは困ったと思います。

相田
いえいえ(笑)。私はざっくり言っていただいたほうがうれしいです。そのほうが、私自身の中での「こんなふうにしたい」というイメージが広がりますし、どんな方が使って、どう楽しむんだろうと想像をするのが好きなんです。とはいえ、寸法や機能も大事なので、必要な時はちゃんとヒアリングさせていただきました。

田片
相田さんが作ってくださったコンセプトシートが、まさに僕らが思い描いていたものというか、それ以上の内容で。そこでの過ごし方イメージまでが具体的に盛り込まれていて、「だからこういうデザインを提案します」という内容だったんです。

相田
このキャビンではカップルがこんなふうに過ごす、このキャビンでは女子会が行われて、こんな会話やシーンが生まれる…というのを妄想しながら、コンセプトデザインを考えていきました。

田片
ここまで提案していただけるなんて、と感動しました。それが出てきてからは、プロジェクトが一気に進みました。唯一、なかなか理想の形に辿り着けなかったのが、屋外での食事シーンのインテリアでした。あの環境に行ったら、自ずとお客様はウッドデッキで食事をすると思ったんですね。長い時間をそこで心地よく過ごすための家具やコンテンツにこだわりたいというのは、アクタスも同じ認識でいてくださって。

上久保
椅子やソファの座り心地も、たくさんの料理を並べて食事を楽しめるテーブルも重視したい。でも、既製のものはいかにも屋外用といったデザインが多いんです。今回イメージしているものはそういったものではないので、探すのが大変でした(笑)。

田片
でも、最終的には理想の形に納めていただいて、アクタスの底力を感じました。

相田
造作家具屋さんが尽力してくださったんです。ウッドデッキのテーブルは、屋外であってもお客様にゆったりお過ごしいただくために、幅が1850ミリと2200ミリで設計しました。この大きさの既製品はなかなかないので、造作したんです。予算も時間も限られている中、色にこだわりたいと私が無理を言って相談を重ね、出来上がったものでした。

田片
一度、相田さんと上久保さんと一緒に、現地のウッドデッキでシミュレーションしたんです。4人や6人で過ごしていただくシーンを想定しているのに、座った時に肩が触れ合ってしまったり、人数分の食器がテーブルに載らないという事態が起こってはいけない!と。そうしたら、既製のテーブルでは私たちが思い描いているようなシーンにならなかったんです。それで、必要な寸法を割り出して相田さんがデザインしてくださったんです。

相田
テーブルから椅子、食器やカトラリーまでがコーディネートされた状態がベストであることを重視していたので、最後まで諦めずにやって良かったです。キャビンは3タイプあって、寝そべるデッキチェアがあるところもあれば、シアターが見られるソファがあるウッドデッキもあったりと、それぞれ異なる過ごし方を提案しています。

田片
カーテンもこだわりましたよね。朝日がすごく入るんです。お客様に「眩しすぎて起きてしまった」と言われるくらい。でも、体験して欲しいのはそれなんです。遮光カーテンで陽を遮った空間で起きるのは、「憧れの暮らし」ではないと思って。

相田
そうなんです。なので、朝陽を感じられるくらいのカーテンを選びました。

ーグランピングエリアのテントのインテリアでは、どんなことを大事にしたのですか?

相田
「くつろぐ」ということを大事にしました。屋外にあるテント空間ですが、ソファを置いて、床にはラグをたくさん敷いて、リラックスしながら過ごせるようにしました。照明も、アウトドアっぽくないアイテムを選んでいます。

上久保
グランピングはベッドの寝心地にこだわりたいというリクエストがあり、サイズを大きめにしています。また、一般的なマットレスは金属製のスプリングコイルが入ったものがほとんどなんですが、湿気で錆びる可能性があるので、スプリングが樹脂素材のマットレスをご提案しました。

田片
グランピングでも試泊をしてみたら、テントのベッドのほうが寝心地が良くて(笑)。リクエストに応えつつ、メンテナンス性にも気遣いがあるのが、アクタスのすごいところ。テントでも居心地の質がちゃんと確保されていて、お客様にご満足いただける空間になっていると思います。

後編へつづく