Interview with ACTUS

Interview 1 SUMIDA AQUA MUSEUM すみだ水族館 すみだ水族館 館長 山内 將生 × アクタスデザイナー 村田 昌子 × すみだ水族館 企画 村木 健治アクタスへの依頼の決め手はその豊富な経験力でした。

MASAO YAMAUCHI × AKIKO MURATA × KENJI MURAKI

すみだ水族館館長の山内様、担当者の村木様とアクタスチーフデザイナー村田にアクタスのデザイン提案が、どのようにすみだ水族館の“お客さまへ届けたい想い”を形にしているかについてお話をおうかがいしました。
ときに笑いあり、急に深い話も飛び出し、3人の信頼関係が垣間見えるここでしか読めない対談となりました。

村田さんの強み…“ゴリ押し力”

すみだ水族館 館内
山内

実は、最初はアクタスが水族館にフィットするとは思っていませんでした。

アクタスの家具は水族館に置く家具としてはオーバースペックだなという印象でした。ちょうどその頃、モノではなくコトの方にウェイトを置くような時代の流れがあり、アクタスにも、アクタスキッズ(*)といったファミリーに向けた提案や、とても目新しいビジョンを多方面に展開していくようなイメージのお話があったので、その実験の場として水族館が適しているんじゃないかと考えました。そこで、キッズスペースのお話から入っていきました。私たちはこれまでの水族館にはない居心地のいい空間を作るんだと一生懸命やっていたものですから、アクタスの店舗の照明やインテリアの感じを実際目の当たりにして、これは居心地いいな...って感じたんです。その時点では、その居心地のよさが水族館とどう融合するかは想像はついておりませんでしたが。

― 村田さんのデザインのもつ特徴や強みとは?

村田

私の強み...ってなんだろう? 逆に、なんでしょうか?(笑)

村木

“ゴリ押し力”じゃないですか?(笑)

言葉は極端ですが、...もうこれしかない!絶対大丈夫です!という(笑)。

ACTUSデザイナー 村田 昌子,すみだ水族館 山内 將生
村田

(笑)

山内

村田さんに言われると、なんだか不思議とそう思えるんです。でもね...実は村田さん強烈に絵が下手なんです(笑)イメージのイラストを描いてくれるんですが、もう全然何の絵かわからないんです!「何の椅子を描いているんだろう?そもそも椅子にみえない」というか・・・ 絵ではなにも伝わってこない(笑)。

一同

(笑)

山内

だけど、村田さんは水族館というこの場所を想像する時に、「飼育スタッフの作業があり、それを見ているお客さまが感じることがあって、だからこそこの場所の意味はこうなんじゃないですか」と、私たちとはまったく違うアプローチで分析した上で、ふんわりしたオーダーをきちっと着地させてくれる提案をしてくださるんです。

水族館ってこういうところなんだっていうのを再認識させてもらえるというか、私たちがつい無意識化していることを、意識的にしてくれるんです。すごいなあって村木君と話しています。そういったところがあるから、もうこれしかない!絶対大丈夫です!という“ゴリ押し”が、すとんと落ちてくるんだと思います。

すみだ水族館 館内
村田

いいお話…!!ありがとうございます。

村木

その場では言わないんですけどね(笑)。

私たちは好きです、村田さんの感性みたいな...なんかこう考え方というか。

山内

うん。助けられていますね。開業時はすみだ水族館のイメージを作り上げる事がとても大変だったから。

村田

デザインをするというのは“想像すること”だと私は思っているんですね。

水族館の他にこれまでも様々な施設のお仕事をさせていただいておりますが、どれも私が自分の好みを全面に出してデザインをしているというわけではないんです。誰しも自分の好みがそれぞれあるわけですからもちろん私にも好みのデザインがありますけれども、その施設やその場所が求めているものを想像をして、自分の主観だけではなく客観的に捉えるようには心がけています。

*アクタスキッズ:Love Livingがコンセプト 「家族と一緒に生活すること自体を楽しもう」、「もっと会話が弾むような生活をやりましょう」という想いが詰まっています。

「それならば、“理科室”です!」

すみだ水族館 館内

― 実際にどのような依頼が形になりましたか?

村木

直近の依頼ですと、開業前にワークショップを行う場所「アクアアカデミー」という内装プランを作っていただいたのですが、それを「もう少し大人のお客さまにも入りやすくなるような場所にしたいです」という依頼を村田さんにしました。どんな家具を入れてくださいとか椅子を何脚入れてくださいといった具体的なお話はあまりお伝えをせずに、こういう過ごし方をしていただきたいですというようなお願いの仕方をしたんです。

山内

そうしたら、村田さんが「それならば、“理科室”です!」ってね。

私たちが想像もできない発想でしたので、「な、なんで理科室なんだ?!」って最初は驚きました。

― 「理科室」というテーマなんですね。それはどういった理由だったのですか?

すみだ水族館 館内
村田

その場所は間口もそんなに広いわけではなく個室に入って行くような造りで、光の強弱も内と外とで変わっていますし、キッズサイズの家具だけですと大人って入りづらいんです。やっぱり「子どもの空間」っていう風に見えていると、そこに子供と一緒に入るというより子供を預ける感じになっちゃうだろうなと。

このお悩みを解決する為に、すみだ水族館の性格を考えることからスタートしました。

すみだ水族館ってエンターテインメント性だけじゃなく、情報を発信していくとかアカデミックな部分っていうのをすごく重要視されているんですよね。その方針に注目して、学習する・吸収するという行為を子どもと大人を切り離すことなくできる場...と考えたところから理科室の発想がうまれました。

大人にとってはノスタルジックを感じる理科室、小さなお子さんにとっては、小学校にはいったら...という憧れの思いをもてる場所として、またワークショップをやっているっていう現状とかいろんなことを考えたときに「もうこれしかない!」って思いました。そこで、“ゴリ押し!!”です(笑)。

すみだ水族館 山内 將生
山内

出来上がってみると、思った以上にシャープでした。

理科室ということでしたから、もう少し野暮ったいというか重厚な感じかなと思ったんですが、理科室ではあるけれどもっとシンプルに洗練された仕上がりにびっくりしました。

― 先ほどその場所を拝見しましたが、実際に親子でご利用になられてましたね。

村田

そう!親子で使ってこそ「すみだ水族館の理科室」なんです。

すみだ水族館内の展示との連携とか、すみだ水族館側の発信の場としての想像もしやすかったし、お客さまの動線や過ごし方の発想もしやすかったんです。すみだ水族館の理科室は、その機能を持っていると確信しました。

ゆっくり本を読んだって、お仕事をしたっていいんです

すみだ水族館 館内

― すみだ水族館が提案する「水族館の新しいあり方」とはどのようなことですか?

山内

すみだ水族館の提供するサービスは、お魚の水槽ではなくお魚の世話をしていることなんです。

私が一番気に入ってるのが、飼育スタッフが館内をペンギンのゴハンを持って歩くということです。

飼育スタッフはバックヤードを歩き、フロントヤードでは出来るだけお客さまに見えないように隅っこを歩いているイメージが強いと思いますが、うちのスタッフは真ん中を歩いてる。ペンギンたちがここで生活をしていて、それをお世話している私たちがいて...という物語をきちっと表現する仕組みを作ろうという在り方が、他の水族館とは違うんじゃないかな。文字の情報を減らすことによって、他にはないコミュニケーションの基点ができているのではないかと思います。

見てもらわなくてもいいんです、感じてもらえれば。椅子を置いて、アロマを使いこの場所でなにか活力のようなものが、少しでもその人に充填されればそれでいいのではないかと思うんです。

目指すものは、クリエイターとかビジネスマンとかお母さんとかおじいちゃんとかがここでなんとなく混在して居心地よく、いわゆるその...「公園で過ごす時間みたいに」ってよく言ってるんです。空間価値というものを最も重要なコンテンツのひとつと位置付けてますね。

ACTUSデザイナー 村田 昌子,すみだ水族館 山内 將生,すみだ水族館 村木 健治
村田

ほんとにそうですよね。それこそ、仕事をしに水族館へきてくれてもいいぐらいに思ったんです。

要はラップトップをここへ持ってきてお仕事をしてもらっても、本を読みにくるでもいい、訪れた方の思い思いの過ごし方をしていただきたいと。

観光地へ行って急いで決められた時間の中で色々と見なきゃいけない...というような過ごし方ではなく、その街にいること自体をゆっくりと楽しむ。旅行に2種類楽しみ方があるとしたら、すみだ水族館を訪れる人には、後者のような過ごし方をしてもらいたいという思いです。

展示を隅から隅まで絶対みてくださいね!ということではなくて、なんかここすごく居心地いいよねとか、静かだねとか、ずっとペンギンを眺めてる...とか、そういういろんなものを想像できる空間―それがすみだ水族館の良さだと思います。

すみだ水族館 館内

― すみだ水族館ではそこかしこに椅子がある。
水槽の前にも椅子がありますが、そのようにオーダーがあったのでしょうか?

山内

いえ、特にそのようにお願いしたわけではないんです。

そもそもは館内にカフェの空間を作ろうということで、ワンコイン・ワンハンドみたいなものを気軽に食べられる空間にしたかったので、「テーブルはいりません、ただ椅子は可変的なものでお願いします」というオーダーをしました。確かに、他の水族館では水槽の前に椅子を置いたりしないので、珍しいことですよね。

すみだ水族館には本物じゃなきゃダメな理由がある

すみだ水族館 館内
山内

この水族館という空間でお客さまにくつろいでほしいという希望があったんですが、私たちが簡単にイメージすると、適当に椅子を買ってきてもいいんじゃないかって思ってしまうところがあるわけなんです。

でも村田さんにはこの椅子がいい理由、このテーブルじゃダメな理由がちゃんとあって、そしてスタッフの行動や、お客さまの動きから足し算と掛け算をして最適な家具を選んでくるというのがすごいなと思います。

村田

本物の椅子を入れるということにすごく意味がありました。

実はこの水族館に置いてある椅子はすべて名だたる名作椅子なんです。

すみだ水族館では「ペンギン研究員」という体験プログラムを実施していたのですが、お客さまがペンギンに餌をあげるまでに1年間もかかるんです。他の水族館ではお客さまはすぐに餌やりの体験をすることが可能かと思うのですが、本来飼育員であれば餌をあげられるところにたどり着くまでには長いプロセスを積み重ねている。それをすみだ水族館では、お客さまであってもプロセスをショートカットせず、行っていることの本質的な部分を絶対におろそかにはしないという丁寧な姿勢があるんです。だからこそうわべだけを提供する空間ではいけないわけです。そういった背景があるから、椅子であっても本物じゃなきゃダメなんです。

それから...このすみだ水族館には、毎日通ってくる子達がいるんですが、「その子達が成長していく中で触れるものなんだ」ということも考えました。

ACTUSデザイナー 村田 昌子,すみだ水族館 山内 將生,すみだ水族館 村木 健治

― その毎日通ってくるお子さまが、毎日「本物の椅子」に座る。

村田

そうです。触れる行為って本当に大事だと思うんです。たとえば、あるファッションブランドのデザイナーは、自分の子どもが小さい頃に、たくさんの種類の革の中から手触りだけで何の革かを言い当てるという遊びを行っていたそうなんです。

子どもたちに「牛の革を持ってきて」と言って、どの革が牛でどの革がヤギのものなのか...。匂い、触覚、子どもたちはただ触れて選び、覚える。そういう教育が生活の中にあることで自然に身につくんだそうです。家具もそうなんです。小さい頃から本当の木やデザインに触れられる機会を与えてあげたいと思います。ただもちろん、選ぶにあたってはその環境に適している素材かどうかも考えながらですが。

名作の家具というのは名作ゆえの理由があるので、ここにはそういうものを提案したい、置いて欲しいと強く思いました。ここに訪れるあらゆる方たちの生活を豊かにしたいですね。

村木

感動しました。お話を聞いていて、本当にその通りだなと思いました。村田さんやるなって改めて思いましたね!

村田

またまた…!(笑)

すみだ水族館 館内

― これからのすみだ水族館は、どのようになっていきますか。

山内

開業してから今まで、想定通りのことと違うことがいろいろとありました。

当初は水槽の前に椅子を置こうとは思っておりませんでしたし、アクアアカデミーはキッズスペースだと思っていましたし。ですが、そういった当初の予見はお客さまの声や反応に合わせてどんどん進化していきました。それが、水槽前の椅子であったり、アクアアカデミーが大人と子供が一緒に学べる理科室になったり、ということなんです。

すみだ水族館は、ワークショップや飲食スペース、飼育スタッフのアクティビティ等、ソフト面でまだまだのびしろがありますので、それに合わせて館内のそのゾーンの意味付けっていうのはこれからも変わっていくと思うんです。

演出家であったり照明の方だったり、それを一緒に考えていただくたくさんのパートナーの中での重要なパートナーのひとりとして、アクタスには今後もいろんなご相談をしながら、これからも進化し続ける水族館でありたいなと思っております。

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