WELL認証:健康とウェルビーイングを重視したビルの新基準

WELL認証とは、ウェルビーイングの観点からビルやオフィスを評価する認証制度です。従業員にとってより働きやすい環境を目指し、WELL認証を取得する企業が日本でも少しずつ増えています。今回の記事では、そんなWELL認証についての概要や評価基準、メリットや取得方法まで詳しく解説します。

WELL認証の概要

まずは、WELL認証とはどんなものなのか、詳しく解説していきます。

WELL認証とは?

WELL認証とは、一定の基準を満たした建築物の空間に与えられる認証です。人々の健康・幸福などを指す「ウェルビーイング」の観点から評価基準が設けられている点が特徴で、ビルやオフィスなどを利用する人が、健康に過ごせる環境であるかが重視されます。

2014年にアメリカで生まれたWELL認証は、その後徐々に認知度を高めています。2024年2月時点で世界48か国が認証を受け、累計認証件数は1,329件にのぼりました。日本でも、2024年2月までに150件の登録が行われており、そのうち49件が認証に至っています。

参考:「GREEN BUILDING JAPAN

評価項目についても、2014年の「WELL v1」から徐々に内容が見直されています。2020年には「WELL v2」へと評価項目がバージョンアップされました。

WELL認証の評価基準

最新の「WELL v2」の評価基準には、10のコンセプトが設けられています。

◼︎10のコンセプト

空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、心、コミュニティ

「WELL v2」では上記の10のコンセプトと「イノベーション」と呼ばれる項目に基づき、124の評価項目と215のパートが設定されています。それぞれ設けられた「必須項目」に加えて、申請者自身が「加点項目」を選択することが可能です。

「必須項目」「加点項目」に基づいて書類審査・実地審査が行われ、100点を満点とした点数評価が行われます。全ての「必須項目」を満たした上で、50点以上であればシルバー、60点以上の場合はゴールド、80点以上はプラチナの認証が得られます。

WELL認証のメリット

日本国内だけで見ても、WELL認証の取得を目指す企業は年々増加傾向にあります。具体的に、WELL認証を得ることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

企業にとってのメリット

企業がWELL認証を受けることにより、客観的に見て「快適な労働環境を提供している会社」として、社会的評価を高められるメリットがあります。

また、WELL認証の取得を目指すことで、従業員のウェルビーイングを考慮した労働環境づくりにつながります。企業の健康経営に対する意識を高めていく上でも、WELL認証は有効な手段の一つと言えるでしょう。

従業員にとってのメリット

健康とウェルビーイングに着目したWELL認証の取得を目指すことで、従業員が長時間を過ごす職場環境をより快適なものに改善していくきっかけとなります。従業員の会社に対する満足度も高まり、労働意欲の向上も期待できるでしょう。

従業員が心身ともに健康な状態で働けることは、会社の生産性の向上や成長にもつながるものです。従業員へのメリットは、企業全体のメリットにもなることを忘れてはなりません。

WELL認証取得のプロセス

建物のWELL認証を取得するためには、登録に必要な書類の作成や、審査で認められるための事前準備が必要です。ここからは、取得までのプロセスや必要な対応について紹介します。

取得プロセスの詳細

WELL認証を取得するまでのプロセスは、以下のような流れとなっています。

  1. 申請前のプランニング
  2. 登録申請・書類作成
  3. 書類審査
  4. 現地審査
  5. 認証

まずは申請前に、会社内の環境がWELL認証の求める基準をクリアできているかを自己評価していく準備が必要です。必須部分はもちろん、その他の項目・パートについてもどれを選択し、アピールするかをプランニングしましょう。

また、取得を目指すために必要な環境改善も必要です。自社だけでは知見が足りないと感じる場合は、WELL認証に詳しい外部の会社の力を借りることも有効な手段となります。

申請に向けた準備が整ったら、オンラインにてプロジェクトの登録を行います。その後審査に必要となる書類をまとめて提出します。

書類審査を通過すると、現地審査が行われます。審査員は海外から現地へ訪れ、3日前後かけて審査。そこで基準を満たしていると判断されれば、晴れてWELL認証取得となります。

認証後の継続的な管理

事前知識として知っておくべきなのが、WELL認証には有効期限がある点です。認証を受けた後も、3年ごとに再認証を受けなければ認証を維持できません。再認証でも、始めに認証を受けるときと同様の内容の報告が求められます。

また、認証後はメンテナンス証明や測定記録、アンケート調査結果などを、年に一度報告することも必要です。適切に報告されない場合、再審査の対象となります。

一度取得して終わりではなく、認証取得後も、継続的なメンテナンスを通してビルト・エンバイロンメントの維持に努めましょう。

まとめ - WELL認証がもたらす未来のビル基準

WELL認証は、オフィス環境がウェルビーイングに貢献していることを証明する一つの手段として、世界的に注目を集めています。サステナビリティが重視されている昨今の時代の変化に合わせ、今後ますます一つの建築基準として重視されていくことでしょう。